門脇の正面、松下の背後にある時計が、ちょうど十二時を指した。
「僕の不適切な態度や言動に対する君の態度がとても毅然としていたので、ものごとに動じない人かと思っていたのですが、友達の話を聞いて納得しました。だからといって、僕が君の親友のように許してもらえるかどうかは、また別の問題なんでしょうけど」
「今の先生は俺にはとても毅然として見えます」
「そんなことありませんよ。君に会う時はいつも指が震えます。ふだん通りに接しようと努力しています。もし毅然として見えているのなら、それは今まで培ってきた外面の賜物でしょうね」
言葉は淡々と綴られた。
能量水まるで他人事のように。門脇は今見ている松下の顔が、素のままなのか、なんらかの努力を要しているものか判断できなかった。
「…高校生で同性愛者だと僕に告白した友人が、最近になってもう一人の男の親友と付き合いはじめたんです」
「友達が二人もですか?」
自分は何を脈絡のいるんだろうと、
能量水門脇は焦った。
「いえ、やっぱりいいです」
「迷惑でないなら、僕は聞かせてほしいと思います」
「つまらないですよ」
「つまらないかどうかは、聞いた僕が判断することです」
プライベートなことだからうかつには話せない。けれど門脇は松下に話したいと思った。それに松下なら…茶化したり馬鹿にせず真面目に話を聞いてくれるという確信があった。
「二人が付き合いはじめたと聞いた時に、
鑽石水普通に考えたらおかしいんだけど、俺には嫌だとか気持ち悪いとか拒絶する気持ちはなかった。そういう気持ちを持ってもいけない気がした。俺が偏見を持つことは、二人の俺に対する信頼を裏切ることになるような気がしたんです」
「君は、その友人にすれば理想的な友達なんでしょうね」
松下はゆっくりと喋った。
「僕に対しても君は理想的な学生であるように。僕も若い時に君のような理解ある友達を作っておくべきだったんでしょう。恥ずかしながら、僕には知り合いはいてもそういう話のできる友人はできなかった。もうこれは社交性以前の、ヒトとしての問題ですね」
寂しそうな顔に、何か突き動かされるような衝動があった。
「もし俺でもよかったら、先生の話をきかせてもらいたいと思います」
思わず口から飛び出した言葉。松下は驚いた顔のあと、寂しそうに笑いながら『ありがとう』と呟いた。